Easier said than done.

 Who is your favorite people?

「好きな、人々?」
「広報から回ってきてて。仕事だと思ってやって頂戴」
「──うーんと、何だって? 好きな人を紹介してください? ……雑誌に載せるゥ? はぁ?」
「うるさいですよ虎徹さん……これ、身内以外じゃないと駄目なんですか? それはまた、面倒な……」
「マジかよ……誰にしよ……うーん」
 悩む彼に、バーナビーは少しだけ考えてから、
「そうですね……じゃ、僕はとりあえず虎徹さんって書いておこうかな」
「!? マジで? バニーちゃん俺のこと、そんな「もちろん真面目に書くわけないでしょう。ある種のサービスですよ、サービス」
 誰に対してのサービスなのか──虎徹はあえて訊かなかったが。いやしかし。
「じゃあ俺もバニーちゃんって書こうかな! いやでも待て、レジェンドって手も」
「──レジェンドにしておいた方がよくないですか? そこ」
「そう? なんでそう思う?」
「いや、僕を好きって言うよりもその方がずっとかっこいいっていうか──おじさんらしい、っていうか」
 なるほど、と彼が頷く。自分らしさ、は大切だ──。
「ん、書けた。これどうすんの?」
「そこの封筒に入れておいて頂戴」


 雑誌が発売され、何気なくバーナビーはそれを手に取った。
「────あれ?」
 虎徹のスペースに、「バニーちゃん」と書かれていて、首を傾ぐ。そのまま、コールを開いて。
「おじさん、この記事、どうして──」
「ああ、それ? 悩んだんだけどさ、折角お前が俺にしてくれたから。……ってお前、声震えてるぞ──」
「別に、何でもないですから。失礼します」
 コールを切りながら、バーナビーはそっと目から流れ落ちるそれを拭った。


 机の上に置かれた雑誌を手に取って、そのページを開く。
「あいつのことは、ライク、ってよりもラブなんだけどな────」
 その呟きは、誰の耳にも届かない。


20110729
(言うは易し、行うは難し。「なにが?」っていうのは小説の中では書けてないですが、まあ、おじさんは大人だしということで。バニーちゃんがおじさんを呼ぶのが安定していないのは意図的なものです。空白の10ヶ月の間の話)