He is best HERO


 彼は、この世界で一番のヒーロー。
 僕にとっても、皆にとっても。
 英雄。ヒーロー。
 彼は今日も、僕たちを助ける。
 彼は今日も、空を舞う。


 青空、白い雲。焼き付くような、陽の光。
 その光が一瞬遮られて、そちらを見れば、彼が空を飛び回っていた。
「ああ……あれは」
 空の人。
 風を操り、空を舞う人。
「────折紙!」
 鋭い声に、振り向けば、焼けたアスファルトの向こうに揺らめく車が。
 空に見とれていたから、うっかり道に出てしまったのだろうか。
 僕はここで、轢かれて死ぬのか。
 それもありだろう、華麗に空を舞う彼と、地べたを這うことしかできない僕。
 天と地の差。

 そんなことを考えていたら、タイガーさんに救われた。
「何してんだお前っ……危ないだろが!!」
「……危なかったですね」
「ンな他人事のように言うなよ!! 人を轢いたら、運転してた側が悪いことになってだな、」
「まあまあ、落ち着いて下さいおじさん。……ただ、おじさんの言ってることは正論です。どうしたんですか、先輩」
 どうしたんだろうか、僕は。分からない。
「……気を付けろよな、折紙。お前が死んだら悲しむ人がいるんだから」
 僕は、その言葉に頷きながら空を見つめていた──。


「どうしたんだ、折紙君。さっき、車に轢かれそうになっていたじゃないか」
 彼に声をかけられて、顔を上げた。心配そうな表情。
 見られていたのか、と気付く。
「あ、えっと」
 急だったせいか、言葉が見つからなかった。スカイハイ、その人は、僕の顔を覗き込む。
「んん、あまり顔色もよくないようだぞ。病院に行こうか?」
「あ、いや……大丈夫ですから、心配しないで下さい」
 そうか? と問われたので、そうです、と返した。
「そうか……君が大丈夫と言うんだから、大丈夫だろうな。じゃあ、私はちょっとそっちに行ってくるから」
 ふと──、何かに肩を押された気がして。
 気づけば僕は、彼の服の裾を掴んでいた。
「あ、あのっ」
「ん?」
「……今度、」
 顔が赤くなっているのが、分かった。
「今度、一緒に何か食べに行きませんか──?」
 言って、ああ、とため息を吐きたくなる。
 きっと僕とは一緒には──。
「ああ、いいな。そうだ、今からでもいい。一緒に行こう、行こう一緒に」
「──え、」
「君の好きなものは何だい」
 僕は咄嗟に寿司と答えていた。
「……寿司が、食べたいです」
「ああスシバーか。丁度私も行きたかったところなんだ」
 優しい嘘に、優しい笑顔。その全てに救われたような、そんな気分。
「行こう。そして行こう」

 彼はやっぱり、一番のヒーロー。

2011.07.14
(私が空←折を書くとこうなります。折紙先輩が無茶苦茶マイナス思考。そして良男がやたら察しがよかったりとかしてね。この二人+ホァンちゃんの三人は仲良くしてればいいよもう!)