星の夢


 今日は七月七日──そう、全国的に七夕である。
 虎徹は折紙と二人、いつもの部屋に笹を飾っていた。
「さーさーのーはーさーらさらー……ってか」
「七夕と言えば日本の行事!! 目一杯楽しむでござるよ!!」
 無邪気にはしゃぐ彼を眺めながら、虎徹は紙を切り、短冊を作る。簡単に穴をあけると、紐を通す。それを、人数分。
「そういや、七夕ってあいつら知ってんのか? なんか説明した方がいいんじゃないか?」
「む、それもそうでござるな。あとで来たら説明することにするでござるよ!」
 楽しそうに笑う折紙を見て、虎徹もまた笑った。


 その数分後に、バーナビーが右手にビニール袋を提げてやって来た。
「おじさん、これ。頼まれていたものです」
「おう、ありがとよ」
 受け取って、虎徹はバーナビーに袋の中の一つを差し出す。中身は、団子だった。
「……え、いいんですか?」
「急に頼んで悪かった。三つ余分に入ってるはずだから、これは折紙の分な。で、俺の」
 袋を見ると、和菓子の老舗である店の名前。折紙にも団子を手渡すと、自分の分を食べだした。
「……うん、美味いな。流石だな、あいつ」
「ん? 知り合いが作られたんですか?」
「そう。高校の同級生に和菓子職人目指してるやつがいてさ、そいつに頼んだんだわ、これ。美味いよなあ、」
 食べ終えた団子の串を見つめる。そのうしろに、その彼が見えたような気がして。
「ごちそうさまでした、タイガーさんの同級生さんは和菓子職人なんですね! 図々しいですが、今度他のものも食べてみたいと伝えておいて下さい……!!」
 感動したのか、素に戻っている折紙に苦笑しながら、虎徹はバーナビーに短冊とペンを渡す。
「これに、願い事を書いて、そこの笹にくくりつけるんだよ。まあ書け書け」
「はぁ……何でもいいんですかね、これ」
「もちろんでござる! バーナビー殿が願うことを書けばいいのでござるよ!」
 にこにこ笑って、折紙もペンを手にする。
「拙者は……もっと日本のことを知ることができますようにと願おうかと!」
「もっと見切れたいじゃなくて?」と虎徹。
「ああ、それもいいでござるな…!! ううむ、どちらにしようか……」
 両方書けばいいじゃないですかとバーナビーが言う。その言葉に顔を上げ、彼は嬉しそうににっこり笑う。
「それもそうでござるね! じゃあ、二つ書くでござるよ!」
 バーナビーはもう書いてしまったようで、その願い事が気になって、虎徹はそれを覗き見しようとした。ところが。
「僕が見せると思いましたか。ほら、とっとと離れて下さい。……あなたに見せると、面倒だ」
 その表情に虎徹はますますその願い事が気になってしまって、能力を発動させて無理矢理奪い取る。
「あっ、おじさん!!」
「えーと、なになに……ん? 『おじさんともっと仲良くできますように』?」
「違いますよどう読んだらそうなるんですか!! 僕が書いたのは、『みんなともっと楽しくやれますように』ですよ! ……あっ」
 にやにやと笑う虎徹に、しまった、とバーナビー。その風景を眺めていた折紙が、笑って、
「その願い、叶うといいでござるねぇ」


 そのしばらくあとに、皆が来た。彼らは思い思いに短冊に願い事を書く。
「おいしいものが食べれますように」「あの人が私を見てくれますように」「世界平和、そして世界平和」──。
 その中の一枚に、「バニーちゃんともっともっと仲良くできますように」と書かれていたことを、彼本人は知らない。


2011.07.14
(こちらにアップするのは遅れましたが、七夕ネタです。書いたのは七日です。なんだか最近三人くらいでわちゃわちゃしてるのがすごい好き……)