旅の途中で怪我をしたり死んだり、という不幸なことはベテラントレーナーでさえも時々あることだ。ただ、新人トレーナーのうちはその確率がぐんと跳ね上がる。頼るべきポケモンたちとの信頼関係がまだ築けていない。知識や経験が圧倒的に足りていない。理由は様々だ。
 ……それに、10歳くらいの少女がこんな路上で野宿なんてするものではない。たまたま通りがかったのが自分だったからよかったが、これが悪意を持った人間だったらどうなっていたのか。考えるだけでぞっとする。
 できるだけポケモンセンターに泊まるように言われているだろうと問えば、少女は気まずそうな顔をした。
「何か急ぐような理由があるのか?」
「……友達と競争してて。どっちが先にバッジ8個集められるか、っていう……」
 だいたい予想できた返答にため息をつく。そんなところだろうとは思った。
「オレも昔はそうだったからあまり人のことは言えないが……あまり危ないことはするもんじゃない。キミに何かあったら、その友達も、手持ちのポケモンたちも悲しむだろう」
「そう……ですね」
 そのとおりだと彼女は頷いて、隣にいたキルリアの頭を撫でた。
2022.03.30